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コラム

2024年4月1日

令和5年4月施行 民法・不動産登記法5
~共有関係の解消に関する見直しについて~

Q 共有関係の解消に関してどのような改正がなされましたか?

○ 裁判による共有物の分割

 共有関係を解消するために、裁判によって共有物の分割を訴えることができます。その方法として従来の法律では、現物分割と競売分割の2つが定められていましたが、改正法では、新たに賠償分割という方法が明文化されました。賠償分割とは、共有物を共有者の一人(又は複数)の所有とする代わりに、共有物を取得した者が他の共有者に代償金を支払う分割方法です。



○ 所在等不明共有者の持分取得制度

 所在等不明共有者との共有関係を解消できるようにするため、所在等不明共有者の持分を取得できる制度が設けられました。ここにいう所在等不明共有者とは、所在が不明な共有者だけでなく氏名等が不明な共有者も含みます。

 本制度は、不動産が共有である場合に、他の共有者の氏名等が不明であるとき、又は、その所在が不明であるときは、裁判所が、共有者の請求により、所在等不明共有者の持分を共有者に取得させるものです(持分取得制度)。


 例えば、ある土地をA、B及び所在不明のCが3分の1ずつの持分で共有していた場合、Aの請求により、Cの持分をAに取得させることができるようになります。もちろん、A・Bの両者が請求した場合における持分取得制度では、Cの持分をA・Bが半分ずつ取得することになります。

 

 当事務所(弁護士法人谷井綜合法律事務所)は、所在等不明共有者持分取得制度の第1号の申立てを行い(東京地方裁判所令和5年(チ)第1001号)、共有持分の取得を命じる決定を得ました。



所在等不明共有者の持分譲渡権限付与制度

 本制度は、不動産が共有である場合に、他の共有者の氏名等が不明であるとき、又は、その所在が不明であるときは、裁判所が、共有者の請求により、所在等不明共有者以外の共有者全員が特定の者に保有する持分全部を譲渡することを条件として、所在等不明共有者の持分を第三者へ譲渡する権限を、請求をした共有者に付与する旨の決定をすることができるものです(譲渡権限付与制度)。 


 例えば、ある土地をA、B及び所在不明のCが3分の1ずつの持分で共有していた場合、Aの請求(裁判所の決定が確定してから2か月以内にA、B及びDとの間で売買契約などの譲渡行為を行うことを条件とする請求)により、Aは、裁判所からCの持分をDに譲渡する権限の付与を受ける決定を得ることができます。これにより、A、B及びCの持分(すなわち、完全な所有権)をDに取得させることができるようになります。




Q 所在等不明共有者の持分取得制度や譲渡権限付与制度は、どのような条件を満たせば利用できますか?

両制度共通

 両制度は、所在等不明共有者をキャッシュアウトさせる制度といえますが、他の共有者が不明なとき、又は所在が不明の者がいるときに裁判所に申し立てを行うことが出発点となります。

 


所在等不明共有者の持分取得制度

 裁判所から公告がされてもその所在等不明共有者が現れて異議を申し立てられたり、申立人以外の共有者からの異議が提出されなければ、裁判所が定める額を供託することで持分の取得をすることができます。供託金の額は、時価を参考にしながらも、不動産鑑定士の評価書や固定評価証明書などをもとに定められます。

 


所在等不明共有者の持分譲渡権限付与制度

 所在等不明共有者以外の共有者全員が原則として決定確定後2か月以内に持分全部を第三者へ譲渡することを条件とするものですので、申立人以外の共有者の持分についても第三者へ譲渡することが完了しなければ、この決定は失効してしまいます。また、供託金額についても、第三者に売却する際に見込まれる売却金額等が考慮される点で、持分取得制度と異なります。このように、持分の譲渡権限付与制度は、第三者への不動産売却後の代金につき、共有者が持分割合による按分取得することを予定している場合に用いられます。




Q 事業者は何ができるようになりましたか?

 例えば、多数の共有者・相続人がいる共有地を取得しようとする際に、賠償分割によって、特定の共有者の単独所有とすることで共有関係を解消することが考えられます。

 また、所在等が不明な者がいる共有地を取得する際には、上記の持分取得制度等を用いることが考えられるなど、土地の取得方法が多様化したといえます。






 

弁護士法人谷井綜合法律事務所では、クライアント様の立場に立った法務相談を行っております。

 

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