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コラム
2025年9月3日
未成年者が共有者となっている不動産を購入する際の留意点
不動産業者・個人にかかわらず、以下の事情を抱える売主から不動産を購入するにあたり、どんなことに留意する必要があるでしょうか。
事情1:不動産の所有者が亡くなり、相続人が売主となるが相続登記が未了
事情2:未成年(18歳未満)の共有者がいる
本コラムでは、不動産を所有する夫が亡くなり、妻と未成年の子1人が相続人で、妻が売主となるケースを題材に、購入時の留意点について解説します。
■総論
相続登記が未了であったとしても、相続人と売買契約を締結することは可能です。
その際、売主が不動産所有者の相続人であるのか、その点の確認は必要です。例えば、死亡直前に離婚していれば、元妻は相続人になりませんので、戸籍で確認する必要があります。
また、不動産の共有者が誰であるのかを正確に把握する必要があります。売主も相続人を正確に把握できていないことがありますので(例:隠し子がいるケース)、売主からの説明だけでなく、戸籍を確認する必要があります。
共有不動産の売買は、共有者全員の同意が必要なため、全員の同意を得ないで売買をしても、同意していない者の持分は移転しません。共有者の1人が勝手に売却した場合、売主は他人物売買の売主となり、他の共有者の持分を買主に移転させる義務を負いますが、当該義務を果たせるかどうかは他の共有者次第となります。そのため、結果的に移転できなければ、買主としては完全な所有権を取得することはできません。
以上を踏まえ、考えられる2つの方法について以下、記載します。
■遺産分割協議等により売主に単独取得させる方法(①)
不動産所有者の相続人間で遺産分割協議をしてもらい、特定の1人(売主)に不動産を取得させ、その旨の登記をすることで、売主は単独の所有者となり、買主へ所有権を移転させることができます。ただし、相続人に未成年者がいる場合には、未成年者は単独で遺産分割協議を行えませんので、子に特別代理人が選任されます。売主側で手間と時間が相応にかかります。
また、売主が子の持分を売買等で個別に取得することで、売主が単独所有となる方法もあります。親子間の売買は利益相反となり、子に特別代理人を選任する必要があるため、この方法も手間と時間が相応にかかります。
売買契約書に売主が遺産分割協議等により単独所有とすることを義務付ける条項を置くことは可能ですが、売主が当該義務を履行できない場合、買主が当該義務を強制することはできず、結果として所有権を取得できません。この場合、子の持分について登記移転できなかったことに対しては損害賠償請求として金銭の支払いを求めることになります。
■子も売主として売買契約を締結する方法(②)
(1)相続登記について
遺産分割協議をしない場合、法定相続分どおりに相続され、不動産は共有状態となります。妻が2分の1、子が2分の1の共有持分を有します。
複数の相続人がいる場合であっても、法定相続分に応じた相続登記はそのうちの1人が行うことができます(共有物の保存行為に属すると解されています)。他の相続人の同意は不要です。そのため、妻は単独で相続登記手続を行えますので、相続登記手続を行うよう、契約書の中に盛り込んでおくと良いと思います。
仮に、売主が相続登記手続を行わない場合、買主が相続登記をできるかについては、“条件付き”で可能とされています。
買主が相続登記をする構成としては、売主の相続登記申請手続を代位行使する、ということになります。売主が相続登記手続をしてくれないので、買主がその手続を売主に代わって行う、ということです。代位行使するには、代位行使をする原因を証明しなければなりません。要は、「買主が売主に代わって相続登記申請手続を行使できる理由」を法務局に提示し、登記官に納得いただかないといけない、ということです。この証明にあたり、不動産売買契約書だけでは足りないとする見解もあり、訴訟提起をして判決を取得することが必要になると考えられています。
(2)子との売買契約について
未成年者は単独で自己の共有持分について売買契約を締結できません。未成年者の持分を売却するには、以下のAB2つの方法があります。いずれの方法であっても、親権者の関与は不可欠です。そのため親権者であることを戸籍で確認する必要があります。
A 親権者が未成年者の法定代理人として契約する
B 未成年者が契約し、親権者が同意する
Aの場合、売主欄は「未成年者 法定代理人 親権者」と記載します。
Bの場合、売主欄は「未成年者」として、別途親権者による同意書を取得します。
AとBの方法に法的な違いはありませんが、Bだと同意書が必要なのでAの方が簡便です。
■まとめ
以上からすると、②の方が実効性があると考えられます。ポイントは以下のとおりです。
○不動産所有者の相続人(共有者)の特定、子の親権者の確認(いずれも戸籍で確認) ○売主へ相続登記を速やかに行うよう依頼する かつ 契約書にも盛り込む ○親権者が法定代理人として契約するか、未成年者を売主として親権者の同意書を取得するか、いずれかの方法を採る(前者の方が簡便) |
(本掲載内容は2025年8月末日の法令を基に作成しております)
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