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コラム
2025年8月18日
【連載②】コンプライアンス
~“プロモーションを含みます“ は冒頭の数秒だけで足りる?~
ステルスマーケティングという言葉(通称:ステマ)、近年で一気に浸透した言葉ではないでしょうか。一時期、有名人によるステマ疑惑というかたちでニュースでも報じられました。例えば、ある有名人が自身のSNSで「最近のオススメ化粧品です」と紹介したとしましょう。これが当該化粧品メーカーとは真に無関係に(報酬なく)紹介しているのであれば、ステマの問題は生じません。問題なのは、実は化粧品メーカーから報酬をもらっていながら、それを隠して(これが“ステルス”の由来です)、紹介することにあります。
我々消費者としては、公告・宣伝に影響を受けることは多々あるため、ステマを放置しておくと、消費者の商品選択に悪影響を与えることとなります。そうした社会的な問題を踏まえ、令和5年10月1日から法的に規制することになりました(景品表示法5条3号、令和5年3月28日内閣府告示第19号)。
ステマ規制の文言は「事業者が自己の供給する商品又は役務の取引について行う表示であって、一般消費者が当該表示であることを判別することが困難であると認められるもの」とされています。規制の対象となるのは、商品・サービスを供給する事業者(広告主)であって、企業から広告・宣伝の依頼を受けたインフルエンサー等の第三者は規制の対象ではありません。消費者庁のHPでも各種情報提供が行われています。
ここまでは既にご存知の方もいるかと思います。以下では、ステマ規制に係る実務上の課題及び考えられる対応策についてご紹介します。
【You Tubeの「プロモーションを含みます」は何秒/何分表示しないといけない?】
You Tubeを視聴していると、冒頭、「プロモーションを含みます」とテロップが表示される場合があります。これは、商品紹介をする動画において、当該商品のメーカー企業のプロモーション(広告・宣伝)であることが分かるよう、視聴者へ表示をしているものです。ステマ規制への対策ともいえます。
では、15分の動画である場合、いったいどれほどの時間「プロモーションを含みます」と表示し続ける必要があるでしょうか。
この点に関し、消費者庁から公表されているステルスマーケティングに関するQ&AのQ15では以下のとおり記載されています。
Q15 動画において「事業者の表示」である旨の表示を行う場合に、動画の冒頭に「広告」、「この動画はプロモーションを含みます。」などと表示していれば、事業者の表示であることが明瞭となっていると考えてよいですか。
A 動画の場合、一般消費者が途中から視聴する場合も考えられるため、冒頭に「広告」などと表記するだけでは、当該表記を見逃すおそれがあります。したがって、事案によっては、動画の冒頭に「広告」と表示していても、表示内容全体から、一般消費者にとって「事業者の表示」であることが明瞭となっていないと判断される場合があります。
画面上に常に「広告」と表示するなど、動画全体を通して「事業者の表示」であることが明瞭となるようにしておくことが望ましいと考えられます。
「事案によっては」という言葉が悩ませます。動画の内容からして企業広告であることが明確である場合、例えば、企業の担当者が登場して商品を説明しているような場合であれば、「プロモーションを含みます」の表示は冒頭の表示だけでも足りると考えられます。
他方、動画の内容からは企業広告であることが分からない場合には、冒頭だけの表示では、ステマ規制違反と判断されるリスクは相応に残ります。動画の内容を変更するか、具体的な商品紹介のシーンでは「プロモーションを含みます」と表示するなど、消費者が誤解しないための対策は必要と考えられます。
ステマ規制が設けられた理由は、消費者が商品選択の判断をするにあたっての誤解を防止することにあります。そうすると、ステマ規制を考えるには、「消費者の目線で見たときに誤解するおそれがあるか」という視点を持つことが必要です。十中八九誤解する、というレベルではステマ規制違反となる可能性は高いです。悩ましいのは、「人によっては誤解するかもしれない」といったものでしょう。この場合、可能な限り誤解の解消に努めることが肝要です。企業広告であることを前面に押し出してしまうと、広告効果が薄れてしまう点を懸念される気持ちは理解できますが、ステマ規制違反が認定されると消費者庁から措置命令が行われ、その内容が公表されることになります。企業のレピュテーションの低下など、せっかくの宣伝活動が逆効果となるおそれがありますので、注意が必要です。
(本掲載内容は2025年7月末日の法令を基に作成しております)
※本掲載内容は法的助言を目的とするものではなく、個別の案件については当該案件の個別の状況に応じ、適切な助言を求めていただく必要がありますことにご留意ください。
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