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コラム
2024年8月19日
休眠担保の抹消に関する法律改正
目次
1 休眠担保権の単独抹消は難しい?!
2 地上権等は公示催告による除権決定を得ることを検討する
3 (根)抵当権は弁済期を確認する
4 (根)抵当権は元本(又は極度額)を確認する
5 訴訟対応
解説
1 休眠担保権の単独抹消は難しい?!
数十年前に設定された根抵当権や、存続期間が経過している地上権のような担保権を休眠担保権といい、これらの担保権が不動産登記情報上に残っていると、不動産売買の円滑な売買や正確な不動産評価を阻害します。とはいえ、休眠担保権は、登記された権利であるために、不動産所有者単独では原則として抹消登記手続をすることができず【手続①】、厄介な権利と言えます。
この休眠担保権の単独抹消手続については、昭和63年の不動産登記法改正以降、改正が重ねられ、今般の令和3年民法改正に伴う不動産登記法改正によって、さらに簡易に休眠担保権の単独抹消が可能になりました。以下では、どのような場合に休眠担保権の単独抹消が認められるかにつき、弊所での取扱った案件を踏まえてご説明します。
2 地上権等は公示催告による除権決定を得ることを検討する
令和3年不動産登記法の改正により、登記された権利の存続期間が満了している地上権等の権利に関する登記や買戻期間が経過している買戻特約に関する登記については、不動産登記規則152条の2による調査を行っても担保権者(以下、「登記義務者」といいます。)の「所在が判明しない」場合に、公示催告の申出が可能となるように要件が緩和されました(【手続②】不動産登記法第70条2項)。
同規則に定める調査は、おおまかに、登記義務者の住民票の登録の有無、その住所を本籍地とする戸籍や戸籍の附票の有無、その住所に宛てた郵便物の到達の有無等を調査するというもので、現地調査までは不要とされています。
公示催告の申出を行って除権決定を得れば、これを抹消登記手続の添付情報とし、抹消登記手続申請をします【手続③】。
3 (根)抵当権は弁済期を確認する
昭和39年4月1日の不動産登記法改正までは、弁済期の記載は登記事項でしたので、閉鎖謄本を取得することで弁済期を確認しますが、それ以降に登記された(根)抵当権については、登記申請書類(金銭消費貸借契約証書等)の確認を試みます。
なお、根抵当権の弁済期については、根抵当権の設定日の3年を経過した日とします(民法398条の19第1項及び昭和63年7月1日民三第3499号通知)。
弁済期の確認により、(根)抵当権の弁済期から20年(根抵当権の場合は設定から23年)経過している場合には、供託利用の特則【手続④】を用いることを検討します。
4 (根)抵当権は元本(又は極度額)を確認する
(1) 供託利用の特則の検討
抵当権の弁済期から20年(根抵当権の場合は設定から23年)を経過しているときには、元本(又は極度額)が戦前の貨幣価値で登記されていることがあります。その場合には、遅延損害金を加算しても数万円に留まることが多いので、供託利用の特則を用います【手続④】。法務局のHPに同特則の供託書のフォーマットがありますので、これを用いて供託を行います。
また、供託利用の特則を用いる場合には、登記権利者の住所変更登記が未了となっているときがありますので、住所変更登記を併せて行うことがあります(詳細は、弊所までご連絡いただけると幸いです。)。
(2) 供託利用の特則が不向きなケース
これに対して、以下の場合には、訴訟による対応【手続⑤】を執ることになります。
① 抵当権の弁済期から20年(根抵当権の場合は設定から23年)を経過しているが、元本(又は極度額)が高額で、遅延損害金を含めた場合に供託金の準備ができないとき
② 抵当権の弁済期から10年(根抵当権の場合は設定から13年)を経過しているに留まるとき。
5 訴訟対応
登記義務者を被告とし、公示送達によって訴訟提起します。訴状では、不動産の所有権を侵害する担保権が設定されていることと、その被担保債権が時効により消滅していると主張します。
現在では、WEB会議システムを用いた訴訟期日が普及してきています。遠方の土地を管轄する裁判所であっても、WEB会議システムを用いれば弊所でも交通費などの費用をかけずに迅速に判決を得ることが可能です。
また、公示送達による訴訟対応であり、全て書面審査が必要となりますので専門的技術が必要となります。
同様の件でご相談、お悩みの方は、弊所までご連絡ください。
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