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2026年9月7日

借地上建物の「共有持分」に建物買取請求権(借地借家法第14条)は認められない
~ 最高裁令和8年8月28日判決~

最高裁判所第二小法廷は、令和8年8月28日、借地上にある建物の持分を譲り受けた者が、地主に対して借地借家法第14条に基づく建物買取請求権を行使できるかについて、「建物の持分について、建物買取請求権は成立しない」との判断を示しました。

借地上建物の共有持分の売買を検討する際の重要な判決です。


■ 判決の内容

【事案】

地主Yは、Aに対して、建物所有を目的として土地を賃貸していました。Aはその土地上の区分所有建物の専有部分を所有していましたが、Aの死亡後、4名の子が相続により当該専有部分をそれぞれ4分の1ずつ取得しました。

その後、不動産会社Xは、このうち3名から専有部分の持分合計4分の3を買い受けました。

しかし、これに伴う土地賃借権の持分譲渡について、地主Yの承諾を得ることができませんでした。

そこでXは、借地借家法第14条に基づき、Yに対して、取得した建物の持分を時価で買い取るよう請求しました。

争点は、借地上建物の全部ではなく、その共有持分を取得した者についても、建物買取請求権が認められるかという点でした。


(借地借家法第14条)

第十四条 第三者が賃借権の目的である土地の上の建物その他借地権者が権原によって土地に附属させた物を取得した場合において、借地権設定者が賃借権の譲渡又は転貸を承諾しないときは、その第三者は、借地権設定者に対し、建物その他借地権者が権原によって土地に附属させた物を時価で買い取るべきことを請求することができる。


【判旨】

最高裁は「賃借権の目的である土地の上にある建物の持分について、建物買取請求権は成立しない」と判断しました。判示内容は以下のとおりです。ポイントは、借地上建物の「全部」を取得した場合と、「共有持分」だけを取得した場合を明確に区別したことにあります。


「賃借権の目的である土地の上にある建物その他借地権者が権原によって土地に附属させた物(以下「建物等」という。)の譲受人は、賃借権の譲渡の承諾又は承諾に代わる許可を得られない場合、当該譲渡を借地権設定者に対抗することができず、借地権設定者から建物等の収去及び土地の明渡しを請求されるおそれがある。借地借家法14条は、このようなときに建物買取請求権を認めることによって、建物等についての投下資本の回収や、社会経済的効用を有する建物等の存続を図るものであると解される。建物買取請求権を認めたとしても、借地権設定者は、建物等の時価相当額を支払うことによって建物等の所有権を取得し、建物等を譲渡して新たに借地権を設定するほか、建物等を取り壊して土地を新たな用途に供することも可能となる。

これに対し、賃借権の目的である土地の上にある建物の持分の譲渡の場合において、建物の持分について建物買取請求権が認められるとすると、一般に、借地権設定者は、その行使によって、当該建物の共有関係に巻き込まれることになる。その結果、借地権設定者は、自らの意思によることなく、当該持分の時価相当額の負担を余儀なくされながら、建物の処分行為を自由にすることはできず、当該建物の共有者として他の共有者との調整を図りつつこれを使用又は収益することができるにとどまることになるのであるから、建物所有権の全部につき建物買取請求権が行使された場合に比して、重大な不利益を被るおそれがあるということができる。また、建物の持分に関する投下資本の回収は、共有物分割請求をすることによって図り得ることからすると、建物所有権の全部の譲渡の場合に比して、建物買取請求権を認める必要性も乏しいというべきである。

したがって、賃借権の目的である土地の上にある建物の持分について、建物買取請求権は成立しないと解するのが相当である。そして、このことは、譲渡の対象が区分所有建物の専有部分の持分であっても異なるものではないから、本件持分について建物買取請求権は成立しないというべきである。」


■ 実務への影響

本判決により、借地上建物の共有持分を取得する場合には、地主の承諾を得られなかったときに、建物買取請求権によって地主に持分を買い取ってもらうという方法を採ることはできないことが明確になりました。

そのため、借地上建物の共有持分を売買等によって取得する場合には、建物持分の価格や権利関係だけでなく、その持分に対応する土地賃借権の譲渡について地主の承諾を得られるかを事前に確認することが、より重要になります。

地主の承諾を得られない場合には、借地借家法第19条に基づく承諾に代わる裁判所の許可を得られるかについても検討する必要があります。

なお、判決文で示唆されているとおり、「建物の持分に関する投下資本の回収は、共有物分割請求をすることによって図り得る」とされており、共有物分割請求の重要性が改めて最高裁により確認されました。


(本掲載内容は2026年8月末日の法令を基に作成しております)

※本掲載内容は法的助言を目的とするものではなく、個別の案件については当該案件の個別の状況に応じ、適切な助言を求めていただく必要がありますことにご留意ください。





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