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コラム
2024年4月1日
令和5年4月施行 民法・不動産登記法4
~共有物の変更・管理に関する見直しについて~
Q 共有物の変更・管理に関する改正の概要を教えてください。
物や不動産の各共有者は、持分に応じて共有物を使用することができますが、共有物に「変更」を加える(農地を宅地に変えるなど)には他の共有者の全員の同意が必要となるほか、「管理」に関する事項(使用者の決定など)は各共有者の持分の過半数で決することになります。
これらの基本的な規定は改正後でも維持されていますが、相続人の数が多かったり、相続人の一部の所在等が不明であったりする場合には、上記の同意を取り付けることが困難であり、土地の利用に支障をきたします。
そこで、改正法では、民法の共有物の変更・管理の規定が、社会経済情勢の変化に合わせた合理的なものへと変更されました。
Q 具体的にどのような改正がなされましたか?
○ 「管理」の範囲の拡大
例えば、事案にもよりますが、砂利道のアスファルト舗装や、建物の外壁・屋上防水等の大規模修繕工事、建物内の階段をスロープに変えること・簡易エレベーターの設置といった共有物の形状や効用の著しい変更を伴わないもの(軽微変更)については、「変更」ではなく「管理」にあたるとして、持分の過半数の同意で済むようになりました。
また、短期の賃借権等の設定については、従来から共有者の全員の同意までは必要ないとされていましたが、具体的にどのぐらいの期間が短期に該当するのかが明示されました。
以下の〔 〕内の期間を超えない短期の賃借権等の設定は、持分の過半数で決定することができます(新民法252条4項)。
(1) 樹木の植栽または伐採を目的とする山林の賃借権等〔10年〕
(2) (1)に掲げる賃借権等以外の土地の賃借権等〔5年〕
(3) 建物の賃借権等〔3年〕
(4) 動産の賃借権等〔6か月〕
※注意※ 借地借家法の適用のある賃借権の設定は、約定された期間内での終了が確保されないため、基本的に共有者全員の同意がなければ無効となります。ただし、一時使用目的の賃貸借や存続期間が3年以内の定期建物賃貸借については、持分の過半数の決定により可能です。
○ 共有者間の意思決定不全への対応
共有者の中に所在不明の者や共有に関して意思を示さない者がいる場合、従来は共有者全員の同意を要する変更や処分をすることはできませんでした。
▼従来
(1)所在等不明共有者がいる場合の変更・管理
改正法では、所在不明者がいる場合には、裁判所の許可を得て、その不明者以外の共有者の全員の同意により共有物を変更したり、持分の過半数で管理に関する事項を決したりすることができるようになりました。
▼例1
A、B、C、D、E共有の土地につき、必要な調査を尽くしてもC、D、Eの所在が不明である場合には、裁判所の決定を得たうえで、AとBは、第三者に対し、建物所有目的で土地を賃貸すること(変更)ができる(A、Bの全員同意)。
▼例2
A、B、C、D、E共有(持分各5分の1)の建物につき、必要な調査を尽くしてもD、Eの所在が不明である場合には、裁判所の決定を得たうえで、AとBは、第三者に対し、賃借期間3年以下の定期建物賃貸借をすること(管理)ができる(A、B、Cの持分の過半数である3分の2の決定)。
(2)賛否を明らかにしない共有者がいる場合の管理
共有者の中に共有に関して意思を示さない者がある場合にも、裁判所の許可を得て、その者以外の共有者の持分の過半数で管理に関する事項を決することができるようになりました。
一方で、他の共有者だけで共有物の変更をすることや賛否を明らかにしない共有者が共有持分を失うことになる行為(抵当権の設定等)は、できないままとなりました。
▼例3
A、B、C、D、E共有(持分各5分の1)の砂利道につき、A・Bがアスファルト舗装をすること(軽微変更=管理)について他の共有者に事前催告をしたが、D・Eは賛否を明らかにせず、Cは反対した場合には、裁判所の決定を得たうえで、AとBは、アスファルトの舗装をすることができる(A、B、Cの持分の過半数である3分の2の決定)。
Q 事業者は何ができるようになりましたか?
例えば、所在等不明者が存在する場合などでも、土地の形質変更の同意を取得できる可能性のあることを念頭に置いて、不動産開発許可の申請をすることが考えられます。
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