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コラム

2024年4月18日

「匿名加工情報」と「仮名加工情報」
~両者の概念、違いについて~

Q1. どうして「匿名加工情報」という概念が設けられたのですか?


A1.「ビッグデータ」を使いやすくするためです。


多くの企業は、大量のデータ(ビッグデータ)を効果的に分析することで、消費者の行動を理解したり、新たなサービスを開発したり、より良い意思決定を行ったりすることに役立てています。例えば、インターネットの閲覧情報、購買履歴情報、GPSからの位置情報などがあらゆる業界で活用されています。

しかしこれには、プライバシー保護とデータの有効活用をバランス良く取り入れる必要があります。その重要性を浮き彫りにしたのが、2013年の「Suica事件」でした。

 

 

「Suica事件」

JR東日本は、ICカードの乗降履歴を活用した分析のために、「Suica」の利用履歴データを第三者企業に提供しようとしました。その際、多くの利用者からプライバシーへの懸念が寄せられました。JR東日本では、個人を特定できないようデータを加工し、安全に配慮したと言われています。それでも大きな論争となったのは、個人情報が漏洩することへの利用者の不安を払拭できなかったこと(利用者への十分な事前説明がなかったこと)、匿名加工されたデータの利用に関するルールが未整備だったこと、などが原因でした。

 

このような背景から、個人を特定できないように加工した情報であっても、適切に管理し利用する必要があるとの認識が高まり、「匿名加工情報」の概念が個人情報保護法(2015年9月改正)に導入されました。

これにより、利用者のプライバシーを守りながら、個人を識別できない形でのデータ利用を促進できることとなりました。






Q2. その後、どうして「仮名加工情報」という概念が設けられたのですか?

 

A2. 加工レベルを緩めて、企業内で情報を利活用しやすくするためです。

 

「匿名加工情報」は、元の個人情報を復元できないほど高いレベルの加工をすることで、第三者への提供を可能にし、分析やマーケティング等に幅広く利用されています。その分、加工基準は厳しく、高度な専門知識や技術力が求められます。そのため、例えば、社内のみで使用する場合には、手間がかかり利便性が低いという問題がありました。


匿名加工は工数がかかり面倒なので、情報を使うことをあきらめる企業も・・・。

 

そこで、匿名加工まではせずに、個人情報の活用に柔軟性を加えようとしてできたのが、「仮名加工情報」の概念です。 

匿名加工情報は…

仮名加工情報は…

加工が大変💦

その分、プライバシーが守られる😊

よって、利用の自由度は高い😊

でも、社内では使い勝手が悪い💦

加工が簡単😊(※)

その分、プライバシーリスクは高まる💦

よって、利用の制約が増える💦

でも、社内で活用するには便利😊(※)

(※)これが「仮名加工情報」の強み!



「仮名加工情報」とは、氏名や住所など個人を特定できる情報の一部を、仮の名前(値・記号)に置き換えたり、削除したりすることで、その情報だけでは個人を特定できなくしたデータのことです。ただし、他の情報と組み合わせることで個人を特定できる可能性があり、依然として、原則「個人情報」に該当します。これが匿名加工情報との大きな違いで、第三者への提供は原則として禁止されています。

 

仮名加工された情報には、普通の「個人情報」の取扱いに関する制約よりも緩やかなルールが設けられています。

例えば、データ漏洩時の報告義務や開示請求、利用停止の請求などの適用は除外されます。また、当初の利用目的を変更したい場合、それを公表することで、新たな目的での利用が可能となります。

 

この仕組みにより、個人情報の活用がより柔軟になり、データの新しい使い方が可能になりました。






Q3. 匿名加工情報と仮名加工情報の違いは何ですか?

 

A3. 個人の識別可能性利用できる範囲が違います。

 

匿名加工情報は、個人を識別することができないように加工し、復元できないようにします。そのため、「非個人情報」の扱いとなります。個人を識別できないレベルまで加工することで個人のプライバシーを保護しつつ、本人の同意を得ることなく第三者に提供できるなど、データの広い利活用が可能となります。

 

一方、仮名加工情報は、個人を直接識別することはできないものの、追加情報によって個人を特定できる可能性が残されている情報です。そのため原則「個人情報」に該当し、第三者への提供は本人の同意が必要である他、より厳格な管理下で利用されます。

 

匿名加工情報

仮名加工情報

プライバシー

(加工)レベル

特定の個人を識別できず、復元もできない

他の情報と照合しない限り、特定の個人を識別できない

メリット・

デメリット

加工に手間はかかるが、目的の制限なく利用可能

匿名加工に比べ加工が簡単。原則第三者提供はできないため、社内利用などに適している

活用例

駅構内で撮影した画像データを分析し、駅の混雑状況を提供

金融機関で顧客データを分析し、顧客の信用リスクを評価

 





 

弁護士法人谷井綜合法律事務所では、クライアント様の立場に立った法務相談を行っております。

 

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