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2025年10月22日

~令和8年1月1日から改正下請法が施行されます~

はじめに

 令和7年5月、下請代金支払遅延等防止法、通称「下請法」が改正され、新たに製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律となりました。法律から下請という言葉が消え、今後は通称「取適法」と呼ばれることになります。取適法の施行日は令和8年1月1日です。本コラムでは、企業への影響の大きい改正点を中心に解説します。これまで下請法の適用はなかったという企業も、今後は遵守が必要となる可能性がある点には十分にご注意ください。


第1 取適法(旧下請法)の主な改正概要

1 適用対象の拡大

(1)適用基準に「常時使用する従業員数」を追加

従来の「資本金」基準に加え、新たに「常時使用する従業員数」を基準とする区分が追加されることとなりました。具体的には、以下の場合に取適法が適用されます。

・物品の製造委託、修理委託、特定運送委託、情報成果物作成委託(プログラム)、役務提供委託(運送・倉庫保管・情報処理)については、常時使用する従業員数が300人超の委託事業者が、常時使用する従業員数300人以下の中小受託事業者(個人も含む)に委託する場合

・情報成果物作成委託(プログラム除く)、役務提供委託(運送・倉庫保管・情報処理除く)については、常時使用する従業員数が100人超の委託事業者が、常時使用する従業員数100人以下の中小受託事業者(個人も含む)に委託する場合


(2)対象取引に「特定運送委託」を追加

適用対象となる取引に、製造等の目的物の引き渡しに必要な運送の委託が追加されることとなりました。


2 一方的な価格決定の禁止(協議義務の新設)

中小受託事業者から価格協議の求めがあったにもかかわらず、協議に応じなかったり、委託事業者が必要な説明を行わなかったりするなど、一方的に代金を決定して、中小受託事業者の利益を不当に害する行為が禁止されます。


3 特定の支払方法などの禁止

以下の支払方法などについて禁止されることになりました。

・手形払

・電子記録債権やファクタリングについて、支払期日までに代金に相当する金銭(手数料等を含む満額)を得ることが困難であるもの

・中小受託事業者との書面合意の有無にかかわらず、振込手数料を代金から差し引くこと



第2 上記改正を踏まえた注意点

1 従業員数について

他社に業務を委託する際に、受託事業者の常時使用する従業員の数を把握する必要があり、その方法として以下が考えられます。

・受託事業者のウェブサイトで従業員数を確認する

・発注における見積依頼書に「従業員数が300人を超える場合は、以下のボックスにチェックを入れて御返送ください」等と記載することにより見積書返送時に従業員基準の該当性を確認する、相手方から提出してもらう見積書の備考欄に「従業員数は300人を超えていない」等の記載を記入してもらう

・委託先が多数あり、従業員数の把握が負担であれば、受託事業者との取引は全て取適法に準拠した取引を行うことも考えられる


2 協議を適切に行わない代金額の決定について

・受託事業者からコスト上昇等を理由に価格協議の求めがあったときは、当該協議に応じる必要がある

・代金の決定には代金の引上げも含まれるため、代金を引きあげる際も協議が必要

・「労務費の適切な転嫁のための価格交渉に関する指針」では、受託事業者から「協議を求め」がない場合でも、発注者の側から価格転嫁について協議の場を設けることが求められる点にも注意が必要

(※)https://www.jftc.go.jp/dk/guideline/unyoukijun/romuhitenka.html


3 手形払等の禁止

前記第1の3の支払方法を採用している場合には、速やかに見直す必要があります。



※本掲載内容は法的助言を目的とするものではなく、個別の案件については当該案件の個別の状況に応じ、適切な助言を求めていただく必要がありますことにご留意ください。 






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