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2026年3月27日

改正貨物自動車運送事業法の白トラ規制とは
——荷主企業が知っておきたいポイントと対応策を弁護士が解説

2026年4月1日、改正貨物自動車運送事業法(改正トラック法)が施行されます。今回の改正では、白ナンバーのトラックに有償で貨物の運送を委託することが禁じられる対象として、運送事業者だけでなく荷主企業も含まれることが明確化されました。


本記事では、改正の概要・荷主企業に関わる罰則の内容・国交省が示す判断基準・実務上の確認ポイントを、弁護士の視点から整理してお伝えします。



【目次】


1. 「白トラ(白ナンバートラック)」とは何か

2. 2026年4月施行——改正トラック法で何が変わるのか

3. 荷主企業に関わる罰則と留意点

4. 貨物自動車運送事業に「該当しない」場合の考え方——国交省が示す判断基準

5. 「自己の生業と密接不可分」かどうかの判断ポイント

6. 実務上の確認ポイント

7. まとめ



「白トラ(白ナンバートラック)」とは何か


「白トラ」とは、国土交通大臣の許可(一般貨物自動車運送事業許可)を取得せずに、白ナンバーの自家用トラックを使って他社の荷物を有償で運ぶ行為の俗称です。


貨物自動車運送事業法第2条第2項は、「一般貨物自動車運送事業」を「他人の需要に応じ、有償で、自動車を使用して貨物を運送する事業」と定義しており、許可なくこの事業を行うことは同法第3条違反にあたります。


有償で貨物運送を行うには、国土交通省から許可を受けた運送事業用車両、いわゆる「緑ナンバー」が必要です。緑ナンバー取得には、運行管理者の選任・労働時間管理・安全管理体制の整備・一定台数の車両保有などの要件を満たす必要があります。白トラはこうした要件を満たしていないため、事故時の補償が不十分になるリスクがあるほか、業界の適正な運賃水準を歪める要因にもなってきました。


これまで白トラを使った荷主側への直接罰則はほとんど存在しませんでした。しかしながら、今回の法改正で荷主への罰則が追加されます。


2026年4月施行——改正トラック法で何が変わるのか


令和7年6月11日に公布された「貨物自動車運送事業法の一部を改正する法律」のうち、違法な白トラに係る荷主等への規制や委託次数の制限等に関する規定は、令和8年(2026年)4月1日から施行されます。


■ 改正の4本柱


【① 荷主等への白トラ委託に関するルールの明確化】

 法改正により、いかなる人も『白ナンバーのトラック』に貨物の運送を有償で委託してはいけないことが明確化されました。荷主側が『白ナンバーのトラック』であると認識して有償で運送行為を発注した時点で違法行為となりえます。

また、違法な『白ナンバーのトラック』に関わっているおそれや疑いのある荷主等に対しては、令和8年4月1日から『トラック・物流Gメン』による是正指導の対象となります。


【② 委託次数(多重下請け)の制限】

貨物自動車運送事業者および貨物利用運送事業者に対して、再委託の回数を2回以内とする努力義務が課されます。


【③ 書面交付義務の拡大】

現行では貨物自動車運送事業者にのみ課されている運送契約締結時の書面交付義務・実運送体制管理簿の作成義務等が、貨物利用運送事業者にも新たに課されます。


【④ 許可の更新制導入(5年ごと)】

一般貨物自動車運送事業は従来、一度許可を取得すれば終身有効でした。今回の改正により、5年ごとの更新制へ変更になります。委託先が許可を適切に更新しているかの定期確認が実務上の課題となります。



荷主企業直面する罰則とリスクの実態


■ 罰則——100万円以下の罰金


白ナンバーのトラックであると認識して有償で運送行為を発注した場合、荷主に対して100万円以下の罰金が科される可能性があります。


■ 行政上の対応——是正指導・企業名の公表


白ナンバーのトラックに関わっているおそれや疑いのある荷主等に対しても、「トラック・物流Gメン」による是正指導の対象となる場合があります。是正がなされない場合は国土交通大臣による勧告が行われ、その事実と社名が公表されることがあります。


■ 実態確認の重要性


「荷主側が白ナンバーのトラックであると認識して有償で運送行為を発注した時点で違法行為となりえます」としています。契約書上の表記だけでなく、実際に運送を行っている車両や事業者の確認が実務上の対応として重要になります。



貨物自動車運送事業に「該当しない」場合の考え方——国交省が示す判断基準


今回の規制は、「貨物自動車運送事業」に該当する行為を白ナンバーで行うことを禁じたものです。同法第2条は「他人の需要に応じ、有償で、貨物を運送する事業」を規制対象と定義していますので、ある業務がこの定義に当てはまらない場合は、本規制の対象外となります。


この点について国交省は以下の判断基準を示しています。


「自己の生業と密接不可分と判断される場合等、白ナンバーのトラックで貨物の有償運送が可能な場合もあります。(例えば、建設業請負契約を締結し、建設業の一環として、その業務に付随して運送を行っている白ナンバーのダンプトラック。ただし、運送行為のみを有償で行う場合は不可。)」<国土交通省リーフレット(※注部分)>


もっとも、「自己の生業と密接不可分」か否かは個別判断を要するものであり、一律に判断できるものではありません。自社の業務実態がこれに当たるかどうかについては、専門家への確認をお勧めします。



「自己の生業と密接不可分」かどうかの判断ポイント


国交省が示す判断の核心は、「運送行為が主要業務の過程に包摂されているか」「運送行為のみを独立して有償で行っていないか」の2点です。以下は、判断にあたって参考となる観点です。


■ 観点① 「運送行為のみを有償で行っていないか」


運送行為のみを切り出して有償で受託している場合は明確に規制対象となります。主業務との一体性が、判断の核心です。


■ 観点② 主たる業務が「運送」とは別に存在するか


業務の中心が何であるかが問題となります。建設工事・設備保守・機器据付・充填・検査サービスなど、運送とは別に独立した主たる業務があり、トラックによる移動がその業務の遂行上必要な手段として生じているにすぎない場合は、「主要業務の過程に包摂されている」と整理できる余地があります。


■ 観点③委託料の算定根拠が何か


委託料が「移動距離」や「輸送量(重量・容積・回数)」のみを基準に算定されている場合、運送が独立した役務として評価される可能性があります。一方、委託料が「作業量・施工数量・処理量」など主たる業務の成果に基づいて算定されており、移動が対価算定の基準となっていない場合は、業務全体の中で運送が主たる目的ではないと整理しやすくなります。なお、国交省の運用解釈においては「名目の如何に関わらず有償性が認められない場合」という表現が使われており、請求書の科目名だけでなく実態が重要とされています。



※以上はあくまで判断の参考となる観点であり、該当するかどうかの結論は個別の事案ごとに異なります。業務の内容・契約の構造・実態の記録を整理したうえで、専門家に確認することが安心につながります。



実務上の確認ポイント


【① 委託先の許可証を確認する】

取引先が国土交通大臣の許可を持つ正規の運送事業者かどうか、許可証(一般貨物自動車運送事業許可証)を現物または写しで確認しましょう。国土交通省の「一般貨物自動車運送事業者検索」データベースでの照合も有効です。


【② 契約を書面で整備し、業務の性質を明確にする】

口頭や慣行での取引になっている場合は、業務内容・報酬・荷役条件・再委託の可否を明記した契約書の整備をお勧めします。委託の実態が「自己の生業と密接不可分な業務に付帯したもの」として整理できるような場合は、主たる業務の内容・委託料の算定根拠が明確になるよう記載しておくとよいでしょう。


【③ 多重下請け構造を把握し、実運送体制管理簿を整備する】

元請け業者がさらに下請けへ委託している場合、委託の連鎖を把握しておくことが求められます。実運送体制管理簿の整備・保管が義務化されており、再委託が2回以内であることの記録としても機能します。


【④ 自社の委託実態について専門家に確認する】

自社の委託構造・契約内容・業務実態が規制対象に該当するかは、個別の状況によって判断が異なります。不明な点がある場合は、弁護士へのご相談をご検討ください。



■ 確認チェックリスト


□ 委託先の運送事業許可証を確認しているか

□ 委託契約が書面化されており、業務の内容と報酬の算定根拠が明記されているか

□ 多重下請けが3次以内に収まっているか(努力義務)

□ 社内の担当者・法務・経営層が改正内容を把握しているか



まとめ


2026年4月1日の施行により、荷主企業もこれまで以上に物流に関する責任を負う立場となります。


まず、白ナンバーの無許可業者への委託については、違反した場合に社名公表や罰則の対象となることが明確化されました。委託先が適正な許可を持つ事業者かどうかを確認し、契約管理の体制を整えておくことが求められます。

さらに、今回の改正では適正な原価を下回る運賃での取引が禁止される方向性も示されており、これまでのような「安さ優先」の発注慣行は見直しが必要になります。契約条件や運賃設定を改めて確認し、社内のガイドライン整備も検討するとよいでしょう。

荷待ち時間の削減や運転者への労務配慮についても法的な努力義務とされているため、物流を外部に委託するだけでなく、自社の業務フローそのものを見直す視点も、今後は重要になってきます。


まずは現状の委託先・契約内容・発注慣行を再度見直すことから始めてみてください。ご不明な点があれば、お気軽に弁護士にご相談ください。


※本記事は2026年3月時点の情報に基づいています。

※本記事は情報提供を目的としたものであり、個別の法律相談ではありません。

 具体的な判断については、弁護士法人谷井綜合法律事務所までご相談ください。






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